外で暮らし、働いたからこそ見えてきた。Uターン者が語る、今の下川町
進学や就職をきっかけに下川町を離れ、町外で暮らし、働いた後に再び下川町へ戻ってきた人たちがいます。
町を出た頃には当たり前だった風景や人との距離感、地域の行事。外の暮らしを経験したからこそ、その価値に気づいたこともあるといいます。
今回、下川町出身でUターンした3人に、外に出て見えた下川町の良さ、昔と今で変わったこと、そして町外で得た経験をこれからどう活かしていきたいかを聞きました。

外に出たからこそ見えた、下川町の良さ
子どもの頃の下川町について尋ねると、印象的だったのは「地域の大人が本気でイベントに関わっていたこと」だといいます。
「何の集まりだったのかは、子どもの頃はあまり意識していなかったんです。でも、イベントに対して真剣に取り組む大人が多かったことは覚えています。そういう場が楽しかったですね」
地域のスポーツ大会や行事など、大人も子どもも一緒になって楽しむ機会がありました。アイスキャンドルフェスティバルで、ドラム缶を使って焼肉をした思い出も残っているそうです。
一方、町外に出た後には、下川町では当たり前だった子どもの遊び方や暮らしの環境が、必ずしも当たり前ではなかったことに気づきました。
「下川では、学校が終わったらすぐ遊びに行く、というのが普通でした。町外に出て、幼稚園や小学校が塀で囲まれているのを見た時は驚きました。交通量も多いので、子どもが自由に遊べる環境ではないこともあるんだなと感じました」
東京近郊で暮らした経験を持つ参加者は、都心へ出た時の人の多さにも圧倒されたと話します。
「新宿のような都心に出ると、人の多さに疲れてしまうこともありました。下川にいる時には意識していなかったけれど、自然が近くにあることや、人との距離感、落ち着いて暮らせることは大きな魅力だと思います」
外での暮らしには、便利さや多様な働き方、人との出会いがあります。その経験を否定するのではなく、外に出たからこそ、下川町で育った環境の良さをあらためて感じることができたといいます。
昔の下川と、今の下川。変わったこと、変わらないこと
Uターン後に感じた大きな変化の一つは、町外から下川町に関わる人や、町で新しいことを始める人が増えていることでした。
「自分が町を出た頃は、『移住』という言葉を今ほど聞かなかった気がします。新規就農で来る人や転勤で来る人はいましたが、都市部などから移り住んで、新しいことを始める人が増えたのは大きな変化だと思います」
昔から町に住む人と、外から来た人が関わり合い、新しい活動や仕事が生まれている今の下川町。子どもの頃には見えていなかった町の動きや、地域の中にある可能性を、戻ってきた今は感じることができるといいます。
「戻ってきてから、いろいろな人と話す機会が増えました。何かをやってみようとした時に、協力してくれる人が意外と多い。下川には、まだできることがたくさんあるんじゃないかと思います」
一方で、町の変化には寂しさを感じる場面もあります。子どもの頃に家族で行った飲食店がなくなっていたことなど、日常の風景も少しずつ変わっています。
「昔よく行っていた店がなくなっていると、やっぱり町が変わったなと思います」
また、かつては地域のスポーツ大会など、大人も一緒に体を動かし、世代を越えて顔を合わせる機会がありました。今はそうした機会が少なくなったように感じるという声もありました。
「大人同士が一緒にスポーツをしたり、気軽に集まったりする機会が、昔より減ったように思います。大きなイベントを続けるのは大変ですが、世代や職場を越えて一緒に楽しめる場があるといいですね」
変わったものがある一方で、変わらないものもあります。人との距離の近さ、地域の中で顔が見える関係、そして誰かが何かを始めようとする時に支えてくれる人がいることです。
「下川らしさは、人とのつながりの中にあると思います。知っている人がいるからこそできることもあるし、声をかけると一緒に考えてくれる人がいる。それは昔から変わらないところかもしれません」
外での経験を、下川でどう活かしていくか
3人がUターンを決めた理由は、それぞれ異なります。
家族の暮らしや子どものことを考えたこと。仕事の将来像を見直したこと。親や祖父母の近くで暮らしたいと思ったこと。いくつもの事情や思いが重なり合った結果として、「戻る」という選択につながっていました。
「辞めるなら下川しかない、という気持ちはありました。外で働いた経験があったからこそ、地元に戻れば仕事以外にもできることがあるんじゃないかと思ったんです」
町外での経験は、Uターン後の仕事や地域との関わりにも活きています。
他地域で見た地域通貨や助け合いの仕組みを、下川町に合う形で取り入れられないか。観光やイベントを入口に、人が関われる機会をもっと増やせないか。高齢者を含め、働きたい人が無理なく地域で力を発揮できる仕組みをつくれないか。外で見聞きした事例や仕事で得た視点が、今の下川町で新しいことを考える力になっています。
「他の地域の取り組みを、そのまま持ってくるのではなく、下川に合う形にできないかと考えています。下川は、人が関わる余地をつくることができる町だと思うんです」
「何もしなければ、町は少しずつ変わっていくと思います。だからこそ、今あるものを大事にしながら、少しずつ新しいことにも挑戦していきたいです」
町外で働いた経験は、下川町から離れた時間ではなく、戻ってからの暮らしや仕事を豊かにする経験にもなっています。
町外にいる下川町出身者へ
今回話を聞いた3人は、町外に住む下川町出身者に対して、ただ「戻ってきてほしい」と呼びかけるわけではありません。
仕事や収入、医療、家族のことなど、Uターンには簡単に解決できない現実的な課題があることも、それぞれが実感しています。
だからこそ、戻るかどうかの二択ではなく、町外にいても下川町とつながる方法があるといいます。
「下川に戻らなくても、近くにいて、声をかけたら一緒に何かができる関係ならうれしいですね」
「同級生にイベントのことを伝えると、『行くよ』と言ってくれることがあります。そういうつながりが少しずつ増えていけばいいと思います」
次に帰省する時、少しだけ町を歩いてみる。昔から知っている人と、今の下川町について話してみる。町のイベントに顔を出してみる。
下川町にいた頃には当たり前すぎて見えていなかったものが、外で暮らし、働いた今だからこそ、違って見えることがあるかもしれません。