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ないものがあるからこそ、自分の仕事はつくれる。下川町で宿とローカルツアーを始めた大石陽介さん
ないものがあるからこそ、自分の仕事はつくれる。下川町で宿とローカルツアーを始めた大石陽介さん

ないものがあるからこそ、自分の仕事はつくれる。下川町で宿とローカルツアーを始めた大石陽介さん

「今の仕事はできるようになった。でも、もっと自分の裁量で、自分の仕事をつくってみたい」

そう感じたことがある人は、少なくないのではないでしょうか。

北海道北部にある下川町。面積の約9割を森林が占めるこの町で、1日1組限定の宿「A-frame cabin iwor」と、町をめぐるローカルツアー「ぐるっとしもかわ」を営む大石陽介さんも、かつて「自分の力をもっと活かせる場所」を探していた一人です。

小学校教員として働いたのち、海外での経験を経て、下川町の起業型地域おこし協力隊「シモカワベアーズ」として着任。町に入り、人と関わりながら、自分の事業をゼロから立ち上げました。

なぜ、都会ではなく、この小さな町を選んだのか。自分の仕事をつくりたいと考えている人に向けて、大石さんの歩みを聞きました。

森に囲まれた下川町で暮らす大石さん一家

下川という地域に泊まる

大石さんが営む「A-frame cabin iwor」は、1日1組限定の宿です。一般的なホテルのように、食事やサービスがすべて用意されているわけではありません。むしろ大石さんは、宿の外に広がる下川町全体を楽しんでもらうことを大切にしています。

「基本的に食事は出していません。町内の飲食店が、自分の宿にとっての食堂のようなイメージです。宿だけに泊まるというより、下川という地域に泊まる。必要があれば町内を案内するツアー付きのプランもあります」

訪れる人は、20代のカップルから、暮らし方を考える30代・40代、北海道を旅する人、インバウンドまでさまざま。Googleマップで偶然見つけて訪れる人も増えています。

宿泊やツアーで大石さんが大切にしているのは「気づき」です。

「便利なものがなくても生活できるとか、木ってただ立っているものだと思っていたけど、今日ちょっと木と話せるようになった気がするとか。そういう新しい発見を持ち帰ってもらえたらうれしいです」

キャビンの前で焚き火を囲む体験

宿に使われている木材は町内の木で、町内の製材所で加工されたもの。ひとつの宿から、下川町の森や産業、暮らしのつながりが見えてきます。大石さんは、それを町のマップを見せながら、訪れる人の興味に合わせて開いていきます。

これは「宿泊業」という枠には収まりきらない、大石さんが自分でつくり出した仕事の形です。

あるものを磨くより、ないものをつくる方が向いていた

大石さんは、もともと小学校の教員でした。小中高の教員免許を持ち、4年間、担任として子どもたちと向き合ってきました。

転機になったのは、海外での経験です。大石さんは現職教員のまま青年海外協力隊としてモンゴルに渡り、小学校教育の現場に関わりました。

そこで実感したのは、「日本では当たり前にあるものが、そろっていない」という環境でした。教材を印刷するにも一苦労。必要なものはすぐには手に入りません。だからこそ、今ある環境で何ができるかを考え、まず自分でやってみるしかありませんでした。

「ないものから新しいものをつくる。ゼロから1をつくるようなことを、ずっとやっていた感覚があります」

帰国後、再び日本の教育現場に戻ったとき、大石さんはこれまでとは違う感覚を持ちました。

「会議の時間、もっと別のことに使えないかなとか、本質に迫れているのかなと感じることがありました」

そして、自分自身についても気づいたことがあります。

「すでにあるものを磨き上げるより、自分でゼロから必要なものをつくっていく方が、自分には向いているのかもしれない」

会社や組織の中で、決められた枠組みの中で力を発揮するのも一つの形です。けれど大石さんは、枠組みそのものを自分でつくることに面白さを感じるタイプでした。この気づきが、地方で自分の仕事をつくるという選択につながっていきます。

余白がある町は、裁量の大きさ

北海道各地を見て回る中で、大石さんは「どこで自分の力を活かせるか」を考えていました。たどり着いたのは、すでに整いきった場所ではなく、これから可能性が広がっていく町でした。

「これから伸びしろがあるところに行った方が、自分が活躍できる場面がたくさんあると思ったんです」

担い手を必要としている領域があり、挑戦を歓迎する空気がある。それは、自分の裁量で動ける余白が大きいということでもあります。すでに完成された組織で役割の一部を担うのではなく、自分の判断で仕事を組み立てていける。それが、大石さんが下川町に惹かれた理由でした。

数ある地域の中で下川町を選んだ決め手は、意外にも制度や条件ではなく「人」でした。移住前から何度も町に通い、多くの人と食事をし、話をする中で、応援し合える空気を感じたといいます。

「この人たちとなら、何かを始めたときに応援してもらえそうだし、自分ができることは手伝えそうだと思いました。実際に、今の事業も多くの人に助けてもらって成り立っています」

起業型地域おこし協力隊は試しながら形にする助走期間

下川町でのミッションは、シンプルに「起業すること」でした。いわゆる起業型地域おこし協力隊「シモカワベアーズ」としての着任です。

最初の数か月で大石さんが徹底したのは、とにかく町を知ることでした。地域のキーパーソンを紹介してもらい、会いに行った先で「次に会うと面白い人はいませんか」と聞き、また紹介してもらう。人と会い、話を聞く中で、下川町の人や資源を案内することに価値があるのではないかと感じるようになりました。

最初はお金を取らずに町を案内し、反応を見るところから始めました。並行して、宿となる三角形のキャビンづくりも進めます。木材の調達、建築、ガラスの手配、建物の移設。わからないことだらけの中で、いろいろな人に相談し、まずやってみることを繰り返しました。

ここで効いてきたのが、起業型地域おこし協力隊という仕組みでした。

「失敗してもいい期間だと思ってやっていました。協力隊の制度があったからこそ、試せたことは大きかったです」

活動費や毎月の報酬、事業プランを一緒に磨いてくれるサポート体制があります。当時、大石さんには小さなお子さんがおり、配偶者も育児中でした。それでも家族で暮らしながら事業の準備に取り組めたのは、この支えがあったからです。

「いきなり独立してすべて自分の資金でやるなら、失敗のダメージは大きい。でも、そこを制度が助けてくれた」

いきなり全リスクを背負うのではなく、収入を得ながら、地域に入り、関係をつくり、実験しながら自分の道を育てる。大石さんにとって、その期間は「自分の仕事をつくるための助走期間」でした。

相談できる人が、すぐ近くにいる

キャビンづくりに関わった人たちと大石さん

自分で仕事をつくるとき、一人ですべてを抱え込むのは大変です。下川町での起業の面白さについて、大石さんは「人との距離の近さ」を挙げます。

「何かをつくるなら、この人に言えばいい、というのが分かる。じゃあ連絡しておいてあげるね、と、つなぎまで面倒を見てくれる人がいるんです」

木材が必要になれば、ネットで検索して片っ端から電話をかける必要はありません。「それならここにあるよ」と、人が人をつないでくれる。スピード感を持って事業を進められるのは、小さな町ならではの強みです。

宿づくりでも、地元の工務店やガラス職人など、多くの人が関わってくれました。三角形のキャビンにガラスをはめ込む作業は難航しましたが、その一つひとつが、今では笑い話であり、大切なエピソードになっています。

「もしかしたら、昔からこの町にいる人だと、いつも決まった人にお世話になる、ということがあるのかもしれません。でも外から来た自分は、いろいろな人に相談できた。そこは面白かったです」

外から来た人間だからこそ、既存の関係にとらわれず、フラットに人とつながれる。それも、地域で仕事をつくるうえでの一つの武器になっています。

自分の仕事をつくりたい人へ

冬のかまくらで訪れた人たちと過ごす時間

大石さんの宿は、単なる宿泊業ではありません。町にある資源を、訪れる人の関心に合わせてつなぐ仕事。町の人と外の人が出会うきっかけをつくる仕事です。誰かに用意された仕事ではなく、自分で見つけ、形にした仕事です。

会社勤めの中で力をつけ、「もっと自分の裁量で仕事を進めたい」と感じている人に、大石さんの歩みは一つのヒントになるはずです。

大石さんは、自分の仕事をつくるうえで大切なことを、こう語ります。

「まずは相手を知る。そして、自分のことも知ってもらう。人として知ってもらわないと始まらないと思います」

そして、正解のない環境については、こう言います。

「正解がないからこそ、何でもできる。だから、楽しむしかないんだと思います」

スキルや専門性は、もちろんあれば役立ちます。けれど大石さんは、それ以上に「まず地域に入り、動きながら身につけていく姿勢」を重視しています。

「スキルは、やっているうちに勝手についてくるものかもしれません。小さく試して、実際にやってみる中で、うまくなっていく」

最後に、次の一歩を考えている人へのメッセージを聞きました。

「重く考えすぎず、一歩踏み出してみてもいいと思います。ただ、応募する前には一度、実際に町に来てみてほしい。どんな人が暮らしていて、どんなことをやっているのか。それを見て、いい感じだなと思えたなら、きっと合うと思います」

会社の中で身につけた力を、次は自分の裁量で、自分の仕事として形にする。下川町には、その挑戦を試しながら育てられる場所と、応援してくれる人たちがいます。

下川町で、自分の仕事をつくってみませんか

大石さんが挑戦したのは、起業を前提とした「起業型」の地域おこし協力隊でした。町に入り、試しながら、自分の事業を立ち上げていく仕組みです。

あれから年数が経ち、下川町を取り巻く状況も、地域で挑戦したいと考える人のニーズも変わってきました。起業だけが、地域で自分の仕事をつくる道ではありません。今回、より幅を広げた「フリーミッション型」での募集を行っています。

フリーミッション型では、活動内容を自分で描くことができます。医療、福祉、教育、環境、食、エンタメなど、テーマは問いません。「地域も自分もワクワクする」ことなら、幅広く挑戦できます。

そして、取り組み方も一つではありません。

  • 町内の組織などに雇用されながら活動する働き方
  • 個人事業主として、自分の事業を立ち上げる働き方

どちらの形も選べます。明確にやりたい事業がある方は、大石さんのように起業へ挑戦することもできますし、まずは雇用されながら地域を知り、力をつけ、その先で自分の道を見つけていくこともできます。

毎月の報酬や活動費に加え、活動を一緒に考え、伴走してくれるサポート体制があります。いきなりリスクをすべて背負うのではなく、収入を得ながら、地域に入り、試しながら自分の道を育てられる。その考え方は、大石さんの頃から変わらず、シモカワベアーズが大切にしているものです。

自分の裁量で仕事をつくりたいと感じている方、下川町で新しい一歩を踏み出してみませんか。

募集の詳細・お申し込みは 下川町地域おこし協力隊 シモカワベアーズ2026 募集 をご覧ください。

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