【第1回】「中古でいいところはないかな」――旭川から下川へ、10年目に見つけた家
河合さんは旭川出身。下川町のことは、来る前まで何も知らなかった。
「行ったこともなくて。」
そんな入り口から始まった下川暮らしも、気づけば10年。単身の頃に入った住宅から、結婚、子どもの誕生を経て住まいを移り、いつのまにか4人家族になっていた。
そして、「そろそろ家がほしい」と思いはじめた頃。一軒家の情報が、思っていたより早く届いた。
築49年。ただし、中はきれいに保たれていた。
見学に行ったのは2〜3回。決断までは、1か月もかからなかった。
第1回は、下川町に来るまでの経緯と、この家との出会いについて。
知らない町から、始まった

― まず、下川町に来られたきっかけを教えてください。
平成25年の4月に来ました。もう14年目になりますね。早いですよ、本当に。
出身は旭川です。大学を卒業して、就職もしないまま実家に帰ってきて。特にやりたいこともなくて、実家暮らしでフリーターをしていました。そのうち親も「そろそろ、ちゃんとしたら」と言い出すようになって。
そんなときに就職が決まって、それをきっかけに下川町に来ることになったんです。

正直なところ、縁もゆかりもなくて。タイミングが合って、話がつながって、それで来ることになった。そんな感じでした。
― 下川町のことは、ご存知でしたか。
まったく知らなかったです。行ったこともなくて。
旭川の人って、基本的にそれより北へは行かないんですよ。
― 来てみて、いかがでしたか。
最初の感想は、「のどかな町だな」でした。
コンビニが1つしかない。

でも、住んでみたら人間って慣れるもんですね。今となっては、この町以外で暮らすイメージがあまり湧かないくらいです。
実際に暮らしてみると、下川町の最大の魅力はやっぱり「自然」ですね。
特に子育ての環境としては、本当にいい場所だなと感じています。日常のなかに緑や土があって、子どもたちが自然に触れ合える環境がすぐそばにある。都会ではなかなかできない経験を、のびのびとできていると思います。
― 町内でも、何度か引っ越されているとか。
そうなんです。最初は単身向けの住宅に2〜3年。結婚してから別の地区に移って、その後また移って、今に至ります。
南から西、そして今と、だんだん町の中心部に寄ってきた感じですね。町内でこんなに転々としている人、あまりいないんじゃないかなと思います(笑)。
今は4人家族です。私と妻、そして長男、長女です。今年で10歳と8歳になる年ですね。

「退職まで払い続けるより」
― 家を買おうと思ったきっかけは何でしたか。
一番大きかったのは、家族が増えて手狭になってきたことです。子どもも大きくなってきますし、そろそろかな、と。
もう一つは、この先の見通しですね。退職するまでずっと賃貸で払い続けるのと、いい中古物件を買うのとを比べたら、後者の方が得なんじゃないかと考えたんです。
― 新築は検討されなかったんですか。
考えはしました。でも、新築を建てるとなると当時は賃貸の方が安かったんですよ。
だから「中古でいいところはないかな」と、その頃はよく思っていました。具体的に探し歩いていたわけではないんですけど、頭の片隅には常にあった、という感じです。
― そこに、情報が入ってきた。
たまたま職場の上司が、この家の話を持ってきてくれたんです。それで「一度、見に行ってみよう」と。
それがきっかけでした。
― 他の物件と比較はされましたか。
してないです。見に行って、その場で「いいですね、この家」と。
私、あまり迷わないタイプなんですよ。いいと思ったら即決する。服も、店を1周してから戻ってくる人がいるじゃないですか。私は気に入ったらその場で決めちゃう。
たまに後悔もするんですけど(笑)、このときは、その性格が良い方に進んだと思います。
築49年でも「買い替えるものがなかった」
― 内見の第一印象はいかがでしたか。
築年数で言えば50年近いんですけど、平成11年に大規模改修をしていて、基礎も断熱もやり直してあったんです。だから、古さはまったく気にならなかったですね。
前に住まれていた方の奥さまが、日々きれいに掃除されていて。広くて、明るくて。「これが築50年か」と思うくらいでした。外見はさすがに年季が出ますけど、中は本当にきれいですよ。

― 設備面はどうでしたか。
食洗機が付いていて、エアコンも比較的新しくて。ストーブも数年前に買い替えたばかりのものが残っていたんです。ストーブって、結構な金額がするじゃないですか。
つまり、入居して「これを買い替えないとな」というものが、何もなかったんです。
― それが決め手に。
そうですね。購入費だけで済むのか、購入プラス改修になるのかって、全然違う話なんです。
しかも改修は、いくらかかるかの見通しが最初は立たない。そこがなかった分、判断はすんなりできました。
― 逆に、気になった点はありましたか。
2階への階段が急なんです。昔の家なので。当時は上の子が小学1年生、下の子はまだ小さかったので、「危ないかな」とは思いました。ただ、構造上の話なので直しようがない。今は子どもも大きくなって、気にならなくなりました。
あとは車庫が、今の車のサイズに合わないんです。高さが足りなくて、背の高い車は入らない。今は軽自動車も背が高いですから。
嵩上げも考えましたけど、それなりに費用がかかる。外に停めても支障はなかったので、そのままにしています。今は自転車置き場と物置ですね。

― 庭もあるそうですね。
家の裏に、畑にできるくらいの庭があります。以前はミニトマトなどを育てていました。
地面があると、プランターとは全然違うんですよ。根がしっかり張れるので。近所の方でも「畑が欲しい」という人はいますから、そこは恵まれていると思います。
第1回まとめ
知らない町から始まった暮らしが、10年目に持ち家という選択にたどり着いた。
きっかけは、家族が増えて手狭になったこと。そして「退職まで賃貸で払い続けるより」という、長い時間軸での計算だった。
見学は2〜3回。他の物件との比較はしていない。それでも迷いがなかったのは、この家が「買った後にお金がかからない状態」で残されていたからだ。
築49年。数字だけを見れば古い。だが、平成11年の大規模改修で基礎と断熱が手当てされ、設備も新しく、何より前の住人の手入れが行き届いていた。
「購入費だけで済むのか、購入プラス改修になるのか。全然違う話なんです」
空き家探しで最も読みにくいのは、改修費用だ。その不確実性が最初からなかったことが、即決を可能にした。
次回(第2回)は、購入までの経緯と資金計画、そして活用した町の補助制度について。複数の希望者がいた中で、なぜこの家族に手渡されたのか。譲る側の心情にも触れます。